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  遺言作成・相続にお悩みの方は、元公証人の弁護士山本信一法律事務所へ
【 自筆証書遺言の作成をお考えの方へ 】

 自筆証書遺言は、公正証書遺言と異なり、いつでも自由に作成できる、作成費用がかからないなどの簡易さから、とりあえず遺言を作成しておこうとお考えの方には有効な手段だと思います。その一方で、よく知られていることですが形式面での法律上の制約により、場合によっては遺言としての効力が認められなかったり、あるいは文言の使い方次第で遺言の内容が不確定となり、遺言がありながらも、その解釈を巡って関係者間で紛争が生じてしまうこともあります。そこで、この章では、その留意点を具体的文例に基づき説明します。

第1 記載例

最初に、自筆証書遺言の 一つの文例を記載します。このように書かれていれば、形式的要件の上では大丈夫でしょうという目安にしてください。

遺 言 書

遺言者〇〇〇〇は、次のとおり遺言します。

第一条 遺言者は、次の財産を遺言者の妻〇〇〇〇(昭和・・年・月・・日生、以下「妻」 〇〇という。)に相続させる。

1 不動産

① 土地 

ア 所在 東京都〇〇区・・・2丁目

 地番 5番3

 地目 宅地

 地積 169.3平方メートル

イ 所在 東京都〇〇区・・・2丁目 

 地番 5番4

 地積 234.5平方メートル 

② 建物

所在 東京都〇〇区・・・2丁目5番3   

家屋番号 5番3の2

種類 居宅

構造 木造瓦葺平家建

床面積 95.88平方メートル

2 動産類

上記建物内にある現金、貴金属類及び家財等各種動産類の全部

 

第二条 遺言者は、次に記載の預貯金債権を含む金融資産全部を、次に記載のとおり相続させる。

1 妻 〇〇に次の金融資産を相続させる。

① 〇〇銀行□□支店における遺言者名義の預金債権の全部

② □□銀行▽▽支店における遺言者名義の預金債権の全部

2 遺言者の長男 〇〇〇〇(昭和・・年・・月・・日生、以下「長男 〇〇」という。)に次の金融資産を相続させる。

① ▲▲銀行□□支店における遺言者名義の預金債権の全部

② 〇〇証券株式会社(取扱店□□支店)に遺言者名義保護預け中の株式等各種有価証券の全部及び遺言者名義で契約している投資信託契約等各種契約に基づく信託受益権その他一切の債権の全部

③ 本条1及び2の①、②に記載の金融資産以外で、遺言者に帰属する全ての預貯金債権その他の金融資産の全部

第三条 本遺言の第一及び第二に記載の財産以外で、遺言者が死亡したときに遺言者に帰属する 全ての財産を長男〇〇に相続させる。

第四条 仮に、妻 〇〇が遺言者と同時か遺言者よりも先に死亡した場合、遺言者は、第一において妻〇〇に相続させるとした財産を、長男〇〇に相続させる。

第五 遺言者は、この遺言の執行者として長男〇〇を指定する。

この遺言執行者は、他の相続人の承諾を要することなく、この遺言に基づく不動産の所有権移転登記申請手続き、預貯金債権の払い戻し、名義変更、解約、各種金融資産の解約、払い戻し及び名義変更を含め、この遺言内容を実現させるために必要な全ての権限を有するとともに、遺言者が〇〇銀行を含む全ての金融機関との間で遺言者名義により契約している貸金庫の開扉、同貸金庫在中物の受け取り及び同貸金庫契約の解約に関する権限を有するものとする。

付言事項

私は、私が死亡した後、これまで住まいとして使っていた建物と土地が、その後も妻の生活の基盤として確保されるようにしておくため、この遺言をつくりました。長男〇〇は、これからもずっと母さんのことを見守ってやってください。                              

令和元年9月3日

住所 東京都中央区〇〇4丁目10番2

遺言者   〇  〇  〇  〇   ㊞

 

第2   具体的な留意事項

1 表題の記載

作成する書面が遺言であることが一目瞭然となるように、表題として「遺言書」と明記しておきます。いろいろ思い入れがあって、「〇〇への気持」とか「私亡き後のこと」など、その他独特な表現をされるケースもあると思いますが、表題中には必ず「遺言書」の文字を記載しておくことをお勧めします。

2 本文文言の記載

すでによく知られているとおり、表題を含む遺言書の本文は、末尾の年月日と署名に至るまで全て遺言者による手書きであることを要します。ただし、遺言書に財産目録を添付する場合には、その財産目録だけはパソコンで作成して印字したものを添付できることになりました。詳しくは相続法改正による新たな制度」の4

3 内容の記載方法

遺言内容の記載の仕方には、このような文章にしなければならないとか、このような用語を使わなければならないという決まりはありません。しかし、書いた人には分かっていても、読んだ人に明確に理解してもらえないと、遺言としての効果が発揮されないこともあり得ます。また、文言の意味を巡って争いが生じないとも限りません。そこで、留意していただきたい例を紹介します。

① 相続させる人又は遺贈の相手方の氏名は、戸籍の文字を使用して記載し、( )書きで生年月日を記載しておく。できればその方と遺言者の間柄が分かる記載を加えておきます。例えば、「遺言者の妻 〇〇〇〇(昭和・・年・・月・日生)に相続させる。」とか「遺言者の知人 〇〇〇〇、生年月日 昭和・・年・月・・日、住所 東京都▽▽区・・5丁目2番1」などです。

② 承継態様(相続又は遺贈)については、相続人に対する場合は「相続させる」を、相続人でない人への場合は「遺贈する」の各文言を使用してください。ときどき「与える」とか「まかせる」、あるいは「譲る」という文字を使われる方がありますが、適切でありません。

③ 財産の記載について

ア 不動産について

不動産は、その登記簿謄本に基づいて、土地の場合は「所在」「地番」「地目」「地積」の順に記載し、共有の場合は遺言者の持ち分を「共有持分 2分の1」と記載します。家屋の場合は、「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」の順に記載し、共有の場合は土地におけると同様に持ち分を記載します。土地・建物のいずれにおいてもご注意いただきたいのは、「所在」は登記簿における記載を書く必要があり、住居表示(郵便物の宛所)を記載すると正確ではないことになります。

イ 借地権について

借地権については、その権利内容が特定できるように、土地賃貸借契約書の記載に基づいて、土地の所在、契約締結年月日、賃貸人の氏名、賃借人の氏名、賃貸土地の面積、契約存続期間などを記載します。賃貸人又は賃借人が相続等により変わっている場合には、遺言作成時の氏名を記載した上で、「(契約締結時の賃貸人は〇〇〇〇)」などと記載しておけば明確になります。遺言中に、借地上の建物については記載してありながら借地権の記載が落ちていると、借地権について遺産分割協議が必要になり、それが決められないと困ったことになります。

ウ 預貯金債権

銀行預金などの預貯金債権については、「将来変わる可能性があるから銀行名は書かないでおく」とおっしゃる方がおられます。もちろん預金先が変わることはあり得ますし、変わっても当然なのですが、変わらなかった場合の遺言執行の時を考えると、預金先である「銀行名」と「支店名」は記載しておくことをお勧めします。ただし、残高まで記載する必要はありません。

エ 金融資産について

ここでも取引先である証券会社の名称と取扱店の名称を記載しておくと、預金債権と同様遺言執行の際に有益です。財産の内容については、毎年数回証券会社から送られてくる「取引明細書」に基づいて、株式などの有価証券なのか投資信託契約における信託受益権なのか等を記載すると、より明確になります。

オ その他の財産の場合

ゴルフ会員権など証券又は証書が作成されている財産については、それら証書を見ながら相手方や権利の内容をできるだけ正確に記載しておくと有効です。 

4 この遺言に明記されていない財産についての条項について(第三条)

遺言書を作成した後、新たな財産を取得した場合、あるいは記載した財産の内容が変容するなどした場合に備えて、その新たな財産の承継先について定めておくための条項です。財産内容が変わった場合、新たに遺言を書き直すこともできますが、この条項があれば、財産内容の変動や記載から漏れた財産についての帰属を定めておくことができます。

5 予備的条項(第四条)について

財産の承継予定者が遺言者と同時か遺言者よりも先に亡くなった場合に備えての規定です。これも遺言内容に変動が生じた場合の予防策です。

6 遺言執行者(第五条)について

遺言執行者の指定がないと、家庭裁判所による指定を待たなければなりません。遺言執行者に指定する方は、できるならば遺言者よりも若く、かつ、法務局や銀行など遺言執行事務を行う場所へ容易に出向ける人を指定しておくと便利です。もし、相続人でない人を指定する場合は、その方の氏名、生年月日、遺言作成時の住所を、これも住民票などに基づいて正確に記載します。

7 作成年月日

年は西暦でも元号でもかまいません。月も日も具体的に記載します。「9月吉日」などと記載される例がありますが、日付が不明確となってしまいます。

8 遺言者の署名

できるだけ戸籍に用いられている漢字を使用し、かつ、明瞭に楷書で記載しましょう。もちろん判読できれば、日頃使用している書体で記載してもかまいません。

9 ㊞について

これも出来ることなら登録印を押しておくと証明力が増します。その際遺言作成日に近接した時期の発行に係る「印鑑登録証明書」を同封するか添付しておくと、検認の際に有効と思われます。   

10 封印について

書き上げた遺言書を封筒に入れるなどした後、その封筒を密封するかどうかは自由です。

ただし、遺言書在中の密封された封筒が発見された場合には、家庭裁判所での検認手続まで勝手に開封することはできません。封筒の裏面にでも、その旨注意書きしておくとよいと思います。

11 保管方法

どこに、どのようにして保管するかは遺言者の自由です。盗難、紛失の予防及び第三者による勝手な書き直しの予防の見地から、適切な方法をお選びください。なお、2020年7月から法務局での保管が可能になります。

詳しくは 相続法改正による新たな制度 4をご覧ください。

 

 

 

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