〒104-0032 東京都中央区八丁堀4-10-2 八丁堀ビル304号
(地下鉄日比谷線 八丁堀駅 A1出口から徒歩3分、 JR八丁堀駅B3出口から徒歩1分)

営業時間
9:00~17:00
 定休日  
土曜・日曜・祝祭日

お気軽にお問合せ・ご相談ください  

03-6228-3513

認知症対策としての「任意後見契約」などの諸制度

認知症対策に有効な「任意後見契約」「財産管理等委任契約」「死後事務委任契約」について(質疑・応答形式)

第1 任意後見契約とはどのような契約ですか

 誰でもに認知症になって判断能力(法律行為能力)が失われてしまうと、自らの意思で、自らの名前で財産の処分や銀行取引きその他各種契約をすることができなくなり、誰かに代わってやってもらわなければならなくなります。奥さんまたは夫などの配偶者あるいは子供がいればある程度のことは用をなしますが、このような人がいなければ困ってしまいます。また、子供に代わりにやってもらうにしても、厳密にいえば委任状が必要なのですが、認知症により判断能力がなくなってしまってからでは委任状さえ作成できない(有効にならない)ことになります。そこで、認知症になる前に、将来認知症などで判断能力が失われてしまったときに備えて、お願いできる人(配偶者や子供)に包括的な形で代理権を与えることにするのがこの制度です。

第2 どのような人たちで契約するのですか

 この契約は、お願いする側の人(以下「委任者」といいます)とお願いされる側の人(以下「受任者」といいます)の両当事者で契約します。そして、この主任者を契約条項の中では「任意後見人」と呼びます。契約締結は、この両者のみで行うのですが、契約が効力を発生することになった場合、すなわちこの契約が使われるようになる時には「任意後見監督人」と呼ばれる人が登場します。この任意後見監督人は、受任者が受任した事務をきちんと行っているかどうか、不正なことをしていないかどうかを監督する役目の人で、個々の家庭裁判所が選任します。

第3 委任者は、受任者に対してどのような権限を与えるのですか

 委任者が受任者に与える権限を「代理権」と呼びますが、これには我々が日常生活で行っている各種の行為、例えば銀行取引、自宅その他各種財産の管理、あるいは財産の処分、賃貸借契約の締結、各種費用の支払い、生活物資の購入・契約、医療契約、介護契約、介護施設への入退所契約、その他委任者において必要とするさまざまな契約を含めることができます。

第4 この契約は二人で締結するだけでよいのですか

 任意後見契約は、公証役場において公正証書により締結する必要があります。後ほど説明するように、この契約で受任者は委任者の重要な財産を管理処分できるような権限を受けることになるので、委任者において本当にそのような委任の意思があるのかどうかを公証人において確認する必要があるからです。

第5 この契約は、締結したら受任者においてすぐに委任者のための事務処理ができるのですか

 契約を締結しただけではできません。委任者が認知症等により実際に判断能力を失い、医師によるその旨の診断がなされた上、家庭裁判所において任意後見監督人が選任されて初めて委任事務処理ができるようになります。 

第6 受任者は、具体的にどのようにして委任された事務処理をするのですか

 契約締結のあと、若しくは任意後見監督人が選任された後、委任者は、受任者に対して行ってもらう事務に必要なもの、例えば銀行の預金通帳と届け出印、不動産の登記済み権利証、実印、印鑑登録カード、保険証、その他必要な書類や物を預け、受任者は、これら書類や物を使って役目とされている事務処理にあたります。その際、受任者において、委任者から事務処理を託されていることを証明するものとして「任意後見契約公正証書」の正本を使用します。すなわち、この公正証書正本が委任状に代わる働きをするわけです。

第7 委任者においては、通帳や印鑑、実印や権利証まで預けるとなると、自分の財産をどうにかされてしまうのではないかという不安になりそうですが

 確かにそのような不安を抱かれるのはごもっともです。しかし、そのような不安が生ずるようでは法律制度として成り立ちません。そこで、委任者のこのような不安を解消させるために設けられたのが「任意後見監督人」の存在と働きです。あわせて、受任者は、委任者から預かった書類や品物の「預かり品目録」を作成して委任者に交付し、さらに数か月ごとに財産の保管状況や銀行取引の状況、財産の保管状況を任意後見監督人に報告しなければなりません。そして、任意後見監督人は、その監督結果・状況を定期的に家庭裁判所に報告するのです。このように受任者の事務処理状況は、間接的にではありますが家庭裁判所の監視のもとに遂行されるのです。 

第8 この契約を締結したあと、何らかの事情や都合で契約を止めたいと思ったら、止められるのですか

 委任者も受任者も、どちらも止められます。ただ、この点については「任意後見監督人」が選任される前と後との場合で要件が異なります。任意後見監督人が選任されるまでの間であれば、両当事者の合意の上で、あるいはいずれかの当事者からの一方的な意思表示でこの契約を解除できます。例えば、子供あるいは知人に受任者になってもらったけれど、その人が遠くへ転勤することになり、あるいは健康上の理由でとても委任された事務処理ができないとなったとき、あるいは知人にお願いして受任者になってもらったけれど、どことなく信頼できないので止めておきたいという場合です。他方、任意後見監督人が選任されてから後の場合、ここでも契約を止めることができるのですが、委任者は、その時点では判断能力がないとされているので、委任者の意思だけではだめで、家庭裁判所の許可を得て解除できることになっています。

第9 受任者に委任する項目・事項は、どのようにして決められるのですか

 基本的には、委任者と受任者において話し合って決めてもらえばよいのです。ただ、当初はこれで足りると思っていても、期間が経過し、委任者を取り巻く環境が変わることにより新たな委任事項を加える必要が出てくることもあります。加えるにせよ内容を変更をさせるにせよ、そのような場合は新たな「任意後見契約公正証書」を作成することになり、手間も費用もかかります。そこで、一般的には最初に任意後見契約を締結するとき、その時点では必要性がないと思われる項目も代理権目録に書き加えておきます。「大は小をかねる」で、やや大きめな代理権目録を作成しておくと、将来の事情変更に対処できることになります。

 代理権目録の文例は委任事項の文例

第10 委任者が認知症になったかどうかは、誰がどのようにして判断するのですか

 認知症になって判断能力が無くなったかどうかは、ご本人は勿論家族でも容易に判断はできません。しかし、家族あるいは受任者になった方が常日頃定期的に委任者と会い、その姿を見ていると、その行動・言動に「あれっ、すこし変だぞ」と気づかれることがあるはずです。受任者は、これに気付いたら家庭裁判所に委任者のための任意後見監督人の選任申し立てを行ってください。もちろん、委任者自ら家庭裁判所に相談に行かれてもかまいません。

第11 認知症になるまでの間に、例えば足腰が悪くて外出ができないとか入院して容易に外へ行けないということになったときにも、誰か代わりに事務処理をやってもらえるような制度があると便利なのですか

 そのような場合に用意されているのが「財産管理等委任契約」です。

第12 財産管理等委任契約は、任意後見契約とどこが違うのですか

 任意後見契約は、委任者において判断能力が失われてしまってからのことを想定しているのに対して「財産管理等委任契約」は、判断能力の欠如ではなく、行動能力が失われた場合に備えるものです。また、任意後見契約は任意後見監督人が選任されて初めて効力が生ずるのですが、財産管理等委任契約は、契約を締結させると同時に効力を生じさせることができます。ただ、契約の当事者間で、契約を締結だけしておいて効力の発生は後日にしようということもできます。そのような場合、いつから効力が発生したかを明らかにするために、委任者から書面で効力発生日を記載して受任者に手渡すという条項をおいておくと後日の紛争が避けられます。

第13 監督者がいなくても大丈夫なのですか

 任意後見の場合と異なり、委任者には判断能力があるわけですから委任者ご自身で受任者の委任事務処理状況を把握し監督するのです。これだけでは心配だという場合には、受任者を二名選任し、例えば居住用不動産を処分するなど、重要な財産を処分するときには受任者二名が共同して行わなければならないとの条項を加えたり、あるいは書面で委任者の同意をえることというような縛りをかけておく方法もあります。

第14 この契約を締結したら、委任した事項はすべて受任者にやってもらわなければならないのですか

 そうではありません。やってもらってもいいし、委任者において自分で行ってもよいのです。例えば、まだ動けるから銀行取引や日用品の買い物はご自分で行っていき、やや体調が思わしくなく外出がきついと思うようになったら受任者に通帳やキャッシュカードあるいは財布を預けてやってもらうというのでもかまいません。

第15 委任者が自ら受任者を監督するといいますが、実際どうやって監督するのですか

 契約条項に、受任者は委任者に対して数か月ごとに事務処理状況を報告する、委任者はいつでも随時受任者に対して報告を求めることができるという内容がふくまれています。また受任者は、委任者から預かった物について目録を作成し、その他金銭出納帳や事務処理日誌を作成して委任者に提出することになっています。委任者は、これら作成された書類を見たり報告内容を聞いて、きちんと事務処理されているかどうか判断します。

第16 この契約も、止めたいときには止められるのですか。

 もちろんできます。委任者・受任者のいずれにおいても、二人合意のうえで、あるいは一方的に契約を解除することができます。契約解除の原因は、任意後見契約と同様様々な例がありますが、この契約を締結したからと言って、将来的にずっとこの契約に縛られなければならないということはありません。ただ、契約が終了したのかどうかを明確にするために、合意であれ一法的にであれ、公証役場において、公証人の署名の認証のある書面を作成しています。

第17 「死後事務委任契約」というのは、どのような契約ですか

 任意後見契約も財産管理等委任契約も、委任者が死亡するとその契約は終了します。ところが、受任者がその事務処理をしていると、委任者が死亡した時点で何らかのやり残した事務、処理未了の事務が残ります。委任者死亡により契約が終了したから「はい、終わります」では、委任者の相続人や事務の相手方において困ってしまう場合が出てきます。例えば、入院費や施設利用料の未払い代金の支払いとか死亡届けの提出その他ある特定の事項については限定的ながら受任者において行ってもらったほうが良い場合があります。このような委任者死亡後に残った事務を「死後事務」と呼びますが、この事務に関する事項を「死後事務条項」として任意後見契約や財産管理等委任契約本体の中に組み込んでおいたり、あるいは本体の契約とは別に独立した契約として締結しておく場合が「死後事務委任契約」と呼びます。この死後事務が多種多様になる場合には独立した契約で、そうでないばあいに「死後事務条項」として契約されています。

第18 この三つの契約における受任者の労務は無償なのですか、有償なのですか

 どちらの取り決めもできます。一般的に、配偶者や子供あるいは兄弟などの近しい親族が受任者となる場合は「無償とする」との契約条項になりますが、有償にすることもできます。他方、弁護士とか司法書士などが業として受任者になる場合には有償となるのが一般的です。

 

 

 

 

お問合せ・ご予約・ご相談はこちら

お気軽にお問合せ・ご相談ください

03-6228-3513
営業時間
9:00~17:00
定休日
土曜・日曜・祝祭日